栃木県弁護士会からのお知らせ

地方消費者行政の恒久的な財源措置等を求める意見書

2017(平成29)年7月27日

栃木県弁護士会     
会 長  近 藤 峰 明


第1 意見の趣旨
 国は、地方公共団体の消費者行政の体制・機能強化を推進するための特定財源である「地方消費者行政推進交付金」の実施要領について、2017(平成29)年度までの新規事業に適用対象を限定しているが、2018(平成30)年度以降の新規事業を適用対象に含めるよう改正し、消費者行政の相談体制、啓発教育体制、執行体制等の基盤拡充に関する事業を適用対象に含めるよう改正するとともに、地方消費者行政を安定的に推進させるための恒久的な財源措置を行うべきである。

第2 意見の理由
1 地方消費者行政推進交付金の実施要項の改正
 2008(平成20)年度からの消費者行政一元化の流れの中で、地方消費者行政の活性化が必要だとして、地方消費者行政活性化基金を造成するための交付金が国により措置され、地方消費者行政は大きく推進した。
 2009(平成21)年9月、消費者庁、消費者委員会設置法及び消費者安全法が施行され、消費生活センターが法的に位置づけられるなど、地方消費者行政を含む我が国の消費者行政が大きくステップアップする契機となった。
 その後、地方消費者行政活性化基金は地方消費者行政推進交付金に移行され、今日まで継続している。この間、数々の法制定・改正が行われ、国及び地方による消費生活相談や消費者教育等の取組により、消費者を取り巻く状況については向上してきたものの、いまだに多くの課題が残されている。
 現在の地方消費者行政推進交付金の枠組みでは、事業ごとに活動期限を設定されているため、地方において事業を継続するためには、期限が切れる事業から順次、自主財源化していくことが求められる。しかし、地方財政の実情は厳しく、財源を捻出することは容易ではない。このような状況下では、2009(平成21)年度に造成された消費者行政活性化基金で任用されている消費生活相談員の継続任用すらできないおそれが生じる。
 新規事業を実施できるのは2017(平成29)年度までとなっているところ、年々消費者被害が移り変わる実情を踏まえると、新たな問題が生じている消費者被害の現場に対応できなくなる。
 以上の検討を踏まえると、地方消費者行政推進交付金の実施要領を改正し、2018年以降の新規事業も適用対象に加えるべきである。
 さらに、現在の日本においては、経済や社会の複雑化、地域社会の絆の弱体化、情報化社会や高齢化社会の進展を受け、消費生活問題、多重債務問題は、複雑な要素を多数含み、解決が困難なものが多い。この解決のためには、消費者行政が、地域社会におけるネットワークの中心となることが必要である。
 地方消費者行政が強化され、地域ネットワークのキーとして機能することができるようになる必要がある。
 地方消費者行政の強化のため、消費生活相談体制の充実・強化とともに被害防止のための出前啓発講座等の啓発活動や悪質業者排除の法執行が一層重要となっていることに鑑み、実施要項を改正し、消費生活相談員の増員及び処遇改善、教育啓発担当の消費生活相談員及び職員の増員、法執行担当職員の増員及び専門性向上等の人的基盤強化についても、適用対象に位置付けるべきである。
 2 地方消費者行政を安定的に推進させるための恒久的な財源措置
地方自治体が消費者行政を行い、国民の声に十分に対応し、それが国に集約されることが、制度改革や行政規制を行う国の消費者行政を行うことにつながっている。今後、国の予算措置がなくなることにより、相談員等の人員を削減せざるを得ない事態となれば,地方自治体が消費生活相談を取り止める、もしくは,消費生活相談は受けても業務量を減らす観点からPIO‐NETへの入力作業を怠り又は入力作業自体も削減する結果を招くおそれもあり、そうなれば国の消費者行政そのものが立ち行かなくなるはずである。
 よって、国民生活の安定の基礎を担っている地方消費者行政を安定的に推進させるため、恒久的な財源措置を行うべきである。

以上