栃木県弁護士会からのお知らせ

憲法記念日を迎えるにあたっての会長声明

 日本国憲法は昭和22年5月3日に施行され,本日,71回目の憲法記念日を迎えるに至った。国民主権・平和主義・基本的人権の尊重を原則とする日本国憲法は,この71年間に完全に国民に定着したものとなっている。
 ところが,平成26年7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定,平成27年9月19日の安保法制の強行採決,平成29年6月15日の共謀罪法の強行採決にみられるように,政府によってこれらの原則が蔑ろにされてきた。
 今般,自衛隊の南スーダン日報問題,加計学園問題,森友学園問題に現れた政府による公文書の隠蔽・改竄により,政治に対する信頼を根本的に損なわせるに至っている。
 そもそも公文書は,公文書管理法が定めるように,健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として,主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ,国民主権の理念にのっとり,適切な保存及び利用等を図られるべきものである。
 公文書が適切に保存,利用,公開されることにより,国民の知る権利が守られ,ひいては適切な議会活動が保証されることになる。まさに民主主義の実現には必要不可欠のものと言って過言ではない。
 その意味では,公文書の隠蔽・改竄は,憲法が予定した国民主権を蔑ろにするものであり,単なる法令違反の問題ではなく,憲法秩序に対する挑戦と言って良い。
 弁護士は,弁護士法第1条がうたうように,基本的人権を守り,社会正義を実現することを使命としている。国務大臣その他の公務員は,憲法を尊重し,擁護する義務を負うものであるが,今般の公文書の隠蔽及び改竄は,憲法秩序に対する挑戦であり,このような問題に対して私たち弁護士は,これを強く非難するとともに,憲法記念日にあたり,憲法の法規範性をあらためて訴えるものである。
2018年(平成30年)5月3日
栃木県弁護士会
会長 増子孝徳