栃木県弁護士会からのお知らせ

現行憲法改正国民投票法のもとで憲法改正を行うことに反対する会長声明

 日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正国民投票法」という。)は,日本国憲法の改正に必要な国民投票に関する手続を定める法律である。
 憲法は,国家権力を縛り,国民の基本的人権を保障し,統治機構の基本を定める国の根本規範であるから,その改正手続においては,主権者である国民が,憲法改正についての十分な情報に基づき,国民相互で十分に議論し,国民の意思が正確に反映されることが不可欠である。
しかし,現行の憲法改正国民投票法には,以下に述べるとおり,多くの問題が存在する。

1 有料広告の規制が不十分であること
 国民投票運動のための有料広告放送は,投票期日前14日間しか禁止されていない。また,勧誘運動ではない意見広告は規制の対象外とされている。このような状況では,資金力の差により,広告の質及び量に圧倒的な差を生じさせうるものであり,国民の意思を国民投票の結果に真に反映させるものとはならない。
2 最低投票率の定めがないこと
 憲法改正国民投票法には,最低投票率についての定めがない。そのため,投票権者のうちの極少数の賛成により,憲法改正がなされるおそれがある。
3 国会発議から投票日までの期間が短いこと
 国会発議から投票日までの期間は最短で60日であり,国民に十分な情報を伝え,十分に議論する時間が確保できない。
4 公務員・教員の国民投票運動に関する規制や組織的多数人買収・利害誘導罪の構成要件が曖昧であること
 公務員・教員の地位利用による国民投票運動の禁止についての規定(第103条)及び組織的多数人買収・利害誘導罪についての規定(第109条)の仕方は曖昧であり,自由な議論を萎縮させるおそれがある。

 仮に,国会により憲法改正が発議されれば,多くの問題が存在する憲法改正国民投票法のもとで国民投票が実施されることとなり,その結果は主権者である国民の意思を真に反映したものとはならない。
 そのため,当会は,憲法改正発議がなされる前に,現行憲法改正国民投票法の問題を明らかにするとともに,現行憲法改正国民投票法のもとで憲法改正を行うことに反対するものである。
2018年(平成30年)11月29日
栃木県弁護士会
会長  増 子 孝 徳