栃木県弁護士会からのお知らせ

商品先物取引における不招請勧誘禁止の大幅緩和に反対する会長声明

 商品先物取引法214条9号は、いわゆる不招請勧誘を禁止する。不招請勧誘の禁止は、営業規制の一種であり、勧誘の要請をしていない顧客に対しての、訪問または電話による勧誘を禁止することである。商品先物取引に知識も関心もない一般消費者である顧客に対して、突然の訪問・電話勧誘により不意打ち的にハイリスク・ハイリターンの取引に引きずり込み、顧客に深刻な損害を与える事案が多数生じていたため、顧客保護のために平成23年1月に導入された規制である。この規制の結果、商品先物取引に関する消費者被害は激減した。
 ところが、経済産業省及び農林水産省は、商品先物取引法214条9号の例外を定める商品先物法施行規則10条の2の改正案を、現在準備中である。その改正案では、ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に、熟慮期間等を設定した契約の勧誘(顧客が70歳未満であること、基本契約から7日間を経過し、かつ、取引金額が証拠金の額を上回るおそれのあることについての顧客の理解度等を書面で確認した場合に限る)を、不招請勧誘禁止の適用除外とするとされている。また、同規則に合わせて、商品先物取引業者等の監督の基本的な指針(以下「監督指針」という)も、改正が準備されている。
 しかし、商品先物取引被害が、不招請勧誘導入によりようやく激減したのに、規制を緩和しては再び被害件数が増えることは必至である。7日間の熟慮期間の規制は、海外先物においても同種の規制があり(ただし14日間)、理解度の書面確認も行われてきたが、いずれも顧客保護のために全く機能しなかった。商品先物取引業者従業員の甘言を信じ込んでいる顧客は、7日間で取引のリスクを正しく理解することは難しく、その状態のまま理解度の書面確認をしても顧客の保護につながらないのである。
 商品先物取引法施行規則及び監督指針の改正は、不招請勧誘を実質的には解禁するに等しい。現在の不招請勧誘禁止規定の遵守状況にも疑義があり、平成25年12月25日付けで商品先物取引業者に対して同禁止規定違反等を理由に業務停止命令等の行政処分がされている。顧客の保護に欠けることとなることは明らかであるから、消費者の権利保護の観点から看過できない。
 よって、今般の商品先物取引法施行規則及び監督指針の改正については強く反対するものである。

2014年(平成26年)7月24日
栃木県弁護士会 
会 長 田 中  真