栃木県弁護士会からのお知らせ

「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめに対する意見書

2017(平成29)年3月23日
栃 木 県 弁 護 士 会
会 長  室  井  淳  男


 消費者庁及び農林水産省の共催する「加工食品の原料原産地表示に関する検討会」で,2016年11月29日付けで「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」(以下「中間取りまとめ」)を公表した。
 加工食品の原料原産地表示については,現行法上22食品群及び4品目に限られているが,中間取りまとめでは,原料原産地表示対象品目を国内で製造し,又は加工した全ての加工食品に拡大することとし,この点については賛成する。
 しかし,消費者の自主的かつ合理的な選択を実質的に確保できるものとは言い難い点があることから,以下のとおり意見を述べる。

第1 意見の趣旨
1 義務表示の対象は,重量割合上位3位まで(ただし,重量割合上位2位までで重量比率の大部分を占める場合は2位まで)の原材料の原産地とすべきである。また,特定の原材料の名称を商品名又は商品名の一部として使用する表示方法(いわゆる冠表示)のうち商品を特長づける原材料が商品名に含まれる商品については,重量割合に係わらず当該原材料の原産地を記載すべきである。
2 中間取りまとめにおける義務表示の例外の提案(可能性表示,大括り表示及び中間加工原材料の製造地表示)には反対する。
3 中間加工原材料については,原料の原産地と中間製造地の双方の表示を義務付けるべきである。

第2 意見の理由
1 義務表示の対象について
義務表示の対象については,製品に占める重量割合上位1位の原料に限っている。しかし,多くの原材料を使用する場合,重量割合上位1位と2位,3位の割合が近接している場合がある。例えば,重量割合上位1位の原料は国産であるがそれと割合の近接している2位以下の原料は外国産という場合,実際には製品の重量割合からすると国内産よりも外国産のものが多く使用されているにもかかわらず,1位の原料の原産地しか表示されないことになると,消費者は国産の原料が主に使用されていると誤認してしまうおそれがある。そこで,複数の原材料を使用している場合には, 原則として3位まで(重量割合上位2位まででその製品の重量比率の大部分を占める場合は2位まで)の表示を義務付けるべきである。
また,特定の原材料の名称を商品名又は商品名の一部として使用する表示方法(いわゆる冠表示)のうち商品を特長づける原材料が商品名に含まれる商品については,当該特定の原材料は消費者の関心も高い原材料であるので,重量割合に係わらず原産地を記載すべきである。

2 義務表示の例外について
消費者は,食品安全や海外支援などの意識から,「国産」か否かだけでなく,輸入国の具体的国名を知った上で選択したいと考えている。そして,かかる消費者の自主的かつ合理的な選択の自由を確保するとともに,消費者の誤認防止,事業者による産地偽装の防止を図る必要がある。
中間取りまとめでは,原産国が3か国以上ある場合には,3か国目以降を「その他」と表示することができるものとした上で,義務表示の例外として,産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ,国別重量順の表示が困難であると見込まれる場合に,使用可能性のある複数国を,使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する「可能性表示」を認める。また,3以上の外国の産地表示に関して産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ,国別重量順の表示が困難であると見込まれる場合に,3か国以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示する「大括り表示」を認める。さらに,「大括り表示」を行おうとした場合には産地切替えなどのたびに容器包装の変更が生じ,「大括り表示」のみでは表示が困難と見込まれる場合に,「輸入」と「国産」を使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示できる「大括り表示+可能性表示」も認めている。
この結果,「輸入」(大括り表示の例)という「国産品ではない」という意味しか有さない表示が認められることになる。また,「アメリカ又はカナダ又は国産」(可能性表示の例),「輸入又は国産」(大括り表示+可能性表示の例)など,国産か外国産かさえ明らかでない表示が許されることになる。その結果,実質的には原料原産地が判別できない表示が認められることになり,消費者の判断過程で無益な情報を記載するだけであって,当該表示に有用性があるとは到底いえない。
また,中間取りまとめは,こうした例外表示は,対象原材料の過去一定期間における国別使用実績又は使用計画(新商品等の場合には今後一定期間の予定)から認められる場合があるとする。しかし,使用計画によっても認められるとすれば,事業者が消費者に知られたくない輸入国を隠すために,3か国以上から輸入することをあらかじめ計画して「輸入」と表示したり,輸入がほとんどであるのに,「国産」の原料も使用しているとあえて表示するために国産品を少量使用する事態も生じかねない。こうした表示は,消費者への情報提供として不十分であるばかりか,消費者の原料原産地の認識を誤導しかねない。
さらに,中間取りまとめにおける義務表示の例外には,事業者のかかる例外表示が実態に合致しているのかを行政が監督する方法も定められておらず,このように表示の例外を広く認めてしまい,しかも監督方法も定められていない中間取りまとめでは,全ての加工食品に原料原産地の表示を義務付けた趣旨にも反するものである。

3 中間加工原材料の表示義務について
中間取りまとめでは,対象となる重量1位の原材料が中間加工原材料である場合は,当該原材料の製造地を「○○(国名)製造」と表示するとされている。
しかし,これでは,原材料自体は外国産であるのに,中間加工を国内で行っていれば「国内製造」ということになるなどといった事態が生じることになる。これでは,原材料も含めて国産品であるかのような誤認を消費者に与えるおそれがある。
消費者の誤認を防ぐため,中間加工原材料であっても原料の原産地と中間製造地の双方を記載させるべきである。

以上