栃木県弁護士会からのお知らせ

最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明

 中央最低賃金審議会は,近々,厚生労働大臣に対し,2019年度の地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。
 昨年,同審議会は全国加重平均26円の引上げ(全国加重平均874円)を答申し,これに基づき各地の地域別最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定された。栃木県の引き上げ額は26円であり,最低賃金時間額は800円から826円に改定された。
 栃木県における最低賃金時間額826円という水準は,1日8時間,週40時間働いたとしても,月収約14万3600円,年収約172万円にしかならず,ここから税金,年金や健康保険料等を支払うのであるから,この金額では労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難である。
 我が国の相対的貧困率は依然として15.6パーセント(2015年)と高止まりであり,貧困と格差の拡大は性別や世代を問わず深刻化している。働いているにもかかわらず貧困状態にある者の多数は,最低賃金付近での労働を余儀なくされており,最低賃金の低さが貧困状態からの脱出を阻む大きな要因となっている。
 2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」では,2020年までに最低賃金時間額を全国加重平均1000円にするという目標を定めているが,この目標を達成するためには,大幅な引上げが必要である。
 したがって,中央最低賃金審議会は,地域別最低賃金額改定の目安を大幅に引き上げることによって,地方最低賃金審議会が決定する地域別最低賃金額の大幅な引き上げを促し,また,栃木県最低賃金審議会においても,中央最低賃金審議会の示す目安額にこだわらず,最低賃金額の大幅な引き上げを図り,地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活を確保すべきである。

2019(令和元)年5月29日
栃木県弁護士会会長 山田 実