栃木県弁護士会からのお知らせ

労働者派遣法の抜本的改正を求める会長声明

 1985年(昭和60年)に制定された労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)は、当初、派遣対象業務を専門性の高いものに限定していた。しかし、その後の改正により、港湾運送業務、建設業務等の一部の例外を除き、原則としてあらゆる業務に労働者派遣が認められ、製造業への派遣も解禁されるに至っている。
 このように雇用に関する規制緩和政策が推し進められた結果、多くの企業が派遣労働者等の「非正規労働者」に依存するようになった。こうした「非正規労働者」は、昨秋からの深刻な不況により、雇い止めや解雇等の「非正規切り」に遭っている。そして、非正規労働者は、単に職を失うだけではなく、生活の本拠たる住居も失ってしまう例も多い。更に、雇用保険や生活保護等のセーフティーネットも十分に機能しておらず、今や非正規労働者は、その生存すら脅かされる状況にある。
 今まさに必要なのは、こうした非正規労働者の雇用と生活を安定させ、国民の生存権、勤労する権利を守ることであり、企業は労働者の雇用に当たっては、直接かつ継続的な雇用を原則とすべきことが求められている。
 ところが、2008年(平成20年)11月に政府により国会に上程された労働者派遣法の一部改正案は、派遣対象業務に限定を加えておらず、また、仕事のあるときだけ雇用される「登録型派遣」をも引き続き容認している。これでは、非正規労働者の雇用を維持し、その生活を安定させる方策としては全く不十分なものであり、かえって悪化させる恐れさえある。
 労働者派遣法は、政府案のような改正ではなく、派遣労働者の雇用と生活を安定させるために、以下のような抜本的改正がなされるべきである。
 
1.雇用の原則はあくまでも直接雇用であることを明確にし、派遣対象を専門的な業務に限定すること。そして派遣可能期間経過後は直接雇用に移行するみなし規定を設けること。
 
2.労働者の生活が極めて不安定になる登録型派遣、日雇い派遣を全面的に禁止すること。
 
3.派遣料金のマージン率に上限を設定するなどして、派遣労働者の低賃金を是正すること。
 
  平成21年6月25日
栃木県弁護士会
会長 田島二三夫