栃木県弁護士会からのお知らせ

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

当会は、国に対し、国選付添人制度の対象事件を、少年鑑別所に送致された少年の事件全件にまで拡大すべく少年法の改正をすることを求める。
 

 
1.少年事件における弁護士付添人の必要性
 少年審判手続において、弁護士は、付添人として、裁判所による非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年に法的援助を行っている。成人に比し少年は精神的に未熟なため取調に迎合しやすく、虚偽自白による冤罪が生じる危険性があるなど、弁護士付添人の必要性は成人刑事事件に比し劣るものではない。また、弁護士は、付添人として、少年の更生のための支援を担っている。少年の非行の背景には、家庭環境や交友関係等に要因が存在していることも多く、少年の更生のためにはその環境調整を図る必要性が高い。そのために弁護士付添人による支援が求められている。少年事件において、少年の法的援助、更生支援を行う弁護士付添人の存在は極めて重要である。
 
2.現行制度の問題点
 しかしながら、現行制度においては、国費により少年に弁護士付添人が選任される場合が極めて限定的にしか認められていない。現在の少年審判における国選付添人制度では、検察官関与決定や被害者等による傍聴申出がなされた事件で国が付添人を必要的に選任するほかは、故意の行為により被害者を死亡させた事件か、死刑または無期もしくは短期2年以上の懲役または禁固にあたる罪という一定の重大事件につき裁判所が裁量で国選付添人を選任するにすぎない。
 このような現行制度の下、少年事件における弁護士付添人(国選、私選を含む)選任率は、少年鑑別所に収容され審判を受ける少年については約40%に止まっており、これは、成人の刑事裁判における弁護人選任率が100%に近いものであることと対比すると極めて低い選任率といわざるを得ない(2008年全国統計参考)。
 また、少年事件については、成人のように起訴猶予の制度がなく、原則として全件が家庭裁判所に送致されることとなっているところ、2009年5月21日から、被疑者段階の国選弁護対象事件がいわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたことに伴い、捜査段階では少年に被疑者国選弁護人が選任されながら、事件が家庭裁判所に送致された後は国選付添人が選任されず弁護士の援助が受けられなくなる場合があるという制度的矛盾も生じている。
 
3.弁護士会の取り組み
 このような問題状況を受け、日本弁護士連合会では、身体拘束された少年の法的援助を受ける権利を保障する観点から、時限的な措置として、全会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、これを財源として国選付添人制度の対象とならない事件について、少年・保護者に対し弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を拡充してきた。
 また、当会においても、身体拘束された少年が希望すれば、無料で弁護士が少年に面会し、少年から付添人となってほしい旨の要請があれば面会を担当した弁護士がこれを受任することを原則とする当番付添人制度を実施してきた。当番派遣された弁護士は、同付添援助制度を利用して積極的に付添人に就任し、少年の権利擁護のための活動を行ってきた。
 さらに、当会では、従来身体拘束の措置を受けた16歳以下の少年事件に限定していた当番付添人制度の対象事件を、平成21年5月21日以降、身体拘束の措置を受けた少年の事件すべてにまで拡大しており、平成21年に付添援助制度が利用された件数は、前年の約5倍にまで増加している。
 
4.少年法改正の必要性
 そもそも、心身ともに未成熟な少年に対して、適正な手続きを保障し、少年の更生を支援するための法的援助を与えることは、本来国の責務である。国による少年への法的援助の保護が、成人に対する法的援助よりも不十分である現在の状況は速やかに改善されなければならない。
 よって、上記のとおり、速やかに少年法を改正するように求める。
 
  2010年(平成22年)4月27日
栃木県弁護士会 会長 伊澤正之