栃木県弁護士会からのお知らせ

全面的国選付添人制度の実現を求める決議

1決議の趣旨
 当会は、国に対して、国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された少年の事件全件にまで拡大する少年法改正を行うことを求める。
 
2決議の理由
 少年事件の弁護士付添人は、非行を犯したとされる少年の審判手続において、少年の立場から手続に関与し、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう監視し、もって少年の権利を擁護する重要な役割を担っている。また、弁護士付添人は、少年の家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、非行を犯してしまった少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
 
 少年鑑別所に収容された少年は、窃盗や傷害などの事件でも、少年院送致や児童自立支援施設等の重大な処分を受ける可能性があり、また、未成熟で防御能力が大人に比べ低いことから、弁護士による法的援助の必要性は極めて高い。それゆえ、罪名を問わず、資力のない少年に弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障する必要があり、そのためには国費で弁護士付添人を付する制度が不可欠である。
 
 しかしながら、2007年に導入された現行の国選付添人制度は、その対象事件を殺人、強盗等の重大事件に限定しており、しかも、裁判所が必要と認めた場合にのみ裁量で付する制度にとどまっている。このため、2009年の1年間に、家庭裁判所の審判に付され、観護措置決定により少年鑑別所に身体拘束された少年は、11,241人に上るのに対し、国選付添人が選任された少年は、わずか516人(約4.6%)にすぎなかった。
 
 2009年5月21日以降、被疑者国選弁護制度の対象事件がいわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたことにより、少年による窃盗や傷害等の事件についても被疑者段階では国選弁護人が選任されるようになったが、国選付添人制度の対象事件はいまだ重大事件に限定されたままとなっている。そのため、被疑者段階では少年に国選弁護人が選任されながら、少年が家庭裁判所に送致されると、少年が弁護士の国選付添人の法的援助を受けられないまま、審判手続きに移行してしまうという問題も生じている。
 
 日本弁護士連合会及び全国の弁護士会は、このような事態を放置できないことから、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施するとともに、すべての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、これを財源として弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を拡充してきた。当会においては、2008年4月1日から2009年3月31日までが14件、2009年4月1日から2010年3月28日までが69件、2010年4月1日から2011年3月20日までが141件と援助利用が飛躍的に伸びている。したがって、当会では少年鑑別所に収容された少年のほとんどにつき、弁護士付添人の援助を受けられる体制が整ったものといえる。
 
 このように、弁護士付添人が必要とされている状況にあって、本来、少年に適正な手続きを保障し、適正な保護処分に付することや、非行を犯してしまった少年の立ち直りを支援するのは国の責務であること、弁護士会が自らの費用で少年を援助する体制を整えていることに鑑みれば、観護措置決定により身体拘束されたすべての少年について、国費で弁護士付添人を付する制度が早急に実現されねばならない。
 
 したがって、上記のとおり法改正を求め決議する。
 
2011年5月21日
栃木県弁護士会総会