栃木県弁護士会からのお知らせ

出入国管理及び難民認定法改正案に反対する会長声明

1 2023年3月7日、通常国会に内閣提出の「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(以下「本入管法改正案」という。)」が提出され、現在、衆議院を通過し、参議院にて審議がなされている。
2 2021年に提出された出入国管理及び難民認定法の改正案(以下、「2021年改正案」という。)は、数多くの問題点をはらんでおり、同年3月6日に名古屋出入国在留管理局で発生した収容者の死亡事件を契機に、各方面からの厳しい指摘を受け、事実上廃案となった。
 2021年改正案の問題点については、2021年4月22日付け「政府提出の入管法改正案に反対し、廃案を求める会長声明」(以下「2021年声明」という。)において、当会が指摘したところである。
3 現在、国会で審議されている本入管法改正案は、2021年改正案の一部を修正したものとされる。
 しかし、本入管法改正案では、当会が2021年声明においてその問題点を指摘した、3回目以降の難民認定申請の送還停止効の原則解除、監理人に過剰な負担を強いる監理措置制度の創設、送還に応じなかった者に対する刑事罰制度の新設などが維持されており、とくに生命や自由が脅かされかねない場所への送還を禁止する国際法上のノン・ルフールマン原則の遵守を危機に陥れかねないなど、その問題点が何ら解消されていない。
4 そして、入管収容施設における長期収容等の問題を根本的に解決するためには、事前の司法審査の導入や無期限収容の廃止、家族の不分離、条約難民の適切な認定保護等の国際人権法の要請に応える抜本的な改善が必要である。
5 本入管法改正案は、様々な問題をはらんで廃案となった2021年改正案と基本的な枠組みを同じくするものであり、何らの抜本的な改善が図られておらず、また、国際的な人権保障の水準に照らして著しい問題を含んでいることから、改めて強く反対するととともに、参議院に対してはその廃案を求める。
以上

2023年5月18日
栃木県弁護士会 会長 山下雄大