栃木県弁護士会からのお知らせ

反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に反対する会長声明

 当会は、2014年以降、集団的自衛権の行使を容認したいわゆる安保法制に対し、恒久平和主義、立憲主義及び国民主権堅持の立場から幾度となく反対の声明を発出してきた。
 しかし、政府は、安保法制を廃止するどころか、2022年12月16日、他国の領域内にあるミサイル発射基地などを攻撃する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記した国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛整備計画のいわゆる安保三文書を閣議決定した。そして、安保三文書を前提に南西諸島へのミサイル配備やアメリカからのトマホークミサイルの前倒し取得を進め、また反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に伴い増大する防衛費を確保するために防衛費財源確保法が制定され、さらには防衛費の財源を確保するための増税も検討されるに至っている。
 このように政府は反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を前提に事態を進展させているが、閣議決定で反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を決めることは、恒久平和主義、立憲主義及び国民主権に反するものである。
 従来、政府は、憲法第9条の下では、_罎国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発生したこと、△海譴鯒喀するために他の適当な手段がないこと、I要最小限度の実力行使にとどまるべきことという三要件を満たす場合にのみ自衛権の行使が許容されると解釈してきた。
 そして、政府は、他国の領域に対して直接脅威を与えるような攻撃的兵器を保有することは自衛のための必要最小限度の範囲を超えるため、憲法第9条2項の「戦力」に該当し、その保有は許されないとしてきた。
 反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有するということは、これまで保有することが憲法上許されてこなかった上述のような兵器を保有することである。したがって、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有は憲法第9条に反し、許されない。
 さらに、政府は、2014年7月1日、従来、憲法第9条に反し許されないと解釈してきた集団的自衛権の行使を存立危機事態において容認する閣議決定をし、これに基づき2015年9月19日に安全保障法制を成立させた。安保三文書はこのような集団的自衛権行使の場面においても反撃能力(敵基地攻撃能力)の行使を認めるとしており、そのため、我が国に対する武力攻撃がないにもかかわらず、相手国領域に対して反撃能力(敵基地攻撃能力)を行使する場面が生じうることになるが、これは自衛権の行使が許される上述した三要件の,鉾燭垢襪海箸砲覆襦
 さらに、反撃能力(敵基地攻撃能力)の行使は相手国からの反撃が当然に予想されるところであり、国民に多大な犠牲を強いることになる戦争を招くことにもなりかねない。これは日本国憲法の基本原則である恒久平和主義に反するものである。このようなものを単に閣議決定のみで決定することは、国民主権及び立憲主義を蔑ろにするものといわざるをえない。
 よって、当会は、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を認めた今般の安保三文書の閣議決定は、恒久平和主義、立憲主義及び国民主権に反するものであり、断固反対するものである。閣議決定に依拠する防衛財源確保法等関係する制度は直ちに廃止されるべきであり、さらに、閣議決定を経て1年を経過する現在においては、関連する予算案は修正されるべきである。

2023年12月27日
栃木県弁護士会
会長 山下 雄大