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最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明
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中央最低賃金審議会は、昨年、全国加重平均50円の引上げを答申し、その結果、栃木県の引き上げ額は50円となり、最低賃金は時給1004円に改定された。
栃木県における時給1004円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約17万4400円、年収約209万円にしかならず、ここから税金や健康保険料等を支払うのであるのだから、時給が1000円を超え過去最大の引き上げ額となってもなお、労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難である。消費者物価総合指数が、2025(令和7)年5月には、前年同月比で3.6パーセント上昇しており、物価上昇に労働者の賃金上昇が追いついていない。
我が国の相対的貧困率は15.4パーセント(2021(令和3)年)と高止まりしており、貧困と格差の拡大は性別や世代を問わず深刻化している。働いているにもかかわらず貧困状態にある者の多数は、最低賃金付近での労働を余儀なくされており、最低賃金の低さが貧困状態からの脱出を阻む大きな要因となっている。
政府は、賃上げを起点とした成長型経済を実現し地方創生を推進するとともに、物価上昇を上回る賃上げの定着に向けて中小企業などへの支援をはじめ、政策を総動員するとしている。
栃木県の最低賃金は時給1004円となり、時給1000円を超えた。石破総理は2020年代には最低賃金を全国平均で時給1500円に引き上げる目標を掲げているが、栃木県の最低賃金額は、この時給1500円にはまだ至っていない。
一方で、石破総理は、今年度の最低賃金の引き上げに向けて、厚生労働省の審議会が示す目安を超える額の引き上げを行う都道府県に対し、特別措置として、国の補助金などで重点的に支援する方針を示しているが、最低賃金の引き上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対して、長期的継続的な中小支援策を強化するべきである。
当会は、栃木県の最低賃金額について、労働者が健康で文化的な生活を確保し、地域経済を健全に発展させるためにも、中小企業への支援策も強化しつつ、少なくとも政府が掲げる目標である時給1500円に速やかに引き上げることを求める。
2025(令和7)年7月1日
栃木県弁護士会会長 杉田明子