栃木県弁護士会からのお知らせ

国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明

 憲法第37条3項は、自ら弁護人を依頼することができないときは、国でこれを附するものとし、被疑者・被告人の刑事手続に関し国選弁護人の選任を憲法上の権利としている。これにより、被疑者段階、被告人段階を問わず、国選弁護人が選任される事件の割合は9割近くに及び、その利用が広く定着するようになった。しかしながら、国選弁護制度に対する国の資金投与が不十分であれば、経済的な問題で有効な弁護活動ができなくなり、本来必要とされる弁護活動がなされなくなるとの懸念を拭うことはできない。そこで、国選弁護制度が有効に機能するためには、国選弁護活動に見合った報酬が確保される必要があるし、弁護活動に必要な費用を国選弁護人が自己負担することのないようにされなければならない。
 ところが、刑事弁護活動の高度化、困難案件の増加、取調べの録音録画化やSNSの発達等による証拠の複雑化膨大化といった様々な要因により、国選弁護事件の時間あたりの報酬単価は下がり続けている。また、ここ数年来の物価上昇も見逃すことはできず、国選弁護人をめぐる環境は、年々厳しさを増す一方と言わざるを得ない。このような中、労力や物価に見合った報酬が得られないとの理由で、弁護士の国選離れが指摘されているところ、現状を放置すればこれが加速する可能性がある。したがって、国選弁護制度維持のためには、国選弁護費用の増額、拡充は喫緊の課題というべきである。
 しかるに、国の国選弁護制度に対する予算措置は甚だ不十分である。その不足を補うために、罪に問われた障がい者等に対する費用、記録謄写費用や当事者鑑定費用の一部等について、弁護士会の予算によって国選弁護人への援助制度を設けるに至っているが、焼け石に水である。
 当会の問題としては、2023年9月、宇都宮拘置支所が宇都宮市内からさくら市喜連川に一時的に移転し、接見のために要する労力、時間が大幅に増えることとなった。ところが、移転先が宇都宮市から直線距離にして25キロメートル弱の場所に位置し、法テラスの算定基準を満たさないことから、本庁管内の国選弁護人の接見のための交通費が一切支給されていない。拘置支所に収容される事件の場合、裁判員裁判事件や否認事件など困難事件が多く、接見を重ねる必要があるところ、交通費すら支給されないというのは、国選弁護人に一層の負担を押し付けるものであり、到底納得できるものではない。
 また、今年3月10日、宇都宮地裁の傷害致死の裁判員裁判事件において無罪判決が出された。当該事件は検察側が10名以上の医師から事情聴取のうえ、起訴に至った事件であった。そのため弁護側医師の意見書作成、証人出廷が必須であり、実際にも弁護側医師の意見が無罪判決獲得の大きな原動力となった。検察側の医師の費用はすべて国費と考えられるところ、弁護側医師2名の費用のうち国費で賄われるのは、証人の旅費日当に過ぎず、それ以上の支給は一切なされない。このような不公平は、弁護側の関係者にのみ負担を強いるものであり、武器対等の見地からして不合理の極みとしかいいようがなく、直ちに是正されるべきである。
 よって、当会は国に対し、国選弁護制度における基礎報酬及び各種弁護費用について、大幅な増額に向けて抜本的な改善が行われることを強く求める。
 
2026年3月30日
栃木県弁護士会
会長 杉 田 明 子