栃木県弁護士会からのお知らせ

出入国在留管理庁による弁護士通知制度の廃止に抗議する会長声明

1 当会は、出入国在留管理庁(以下、「入管庁」という。)が、送還予定時期に関する弁護士通知制度(以下、「本制度」という。)を本年2月1日以降一方的に廃止したことに抗議し、通知の再開を求めるものである。
2 本制度は、2010年になされた日本弁護士会連合会と法務省入国管理局(当時)との合意に基づくものであり、被退去強制者の代理人弁護士に対し、概ね送還予定時期の2か月前を目途として、送還予定時期の通知がなされてきた。
 送還予定時期は、行政処分を受けた被退去強制者について、代理人弁護士が行政訴訟の提起、執行停止の申立の検討、準備を行うに当たり重要な情報であり、本制度は、裁判を受ける権利を実効的に保障するうえで維持されなければならない。
 特に、難民認定申請者については、難民不認定処分の審査請求において却下または棄却裁決がなされた場合には、出入国管理及び難民認定法第61条の2の9第3項による送還停止効が、行政事件訴訟の出訴期間経過を待たずして失われることになるから、不認定処分または同審査請求の取消訴訟の提起、執行停止の申立て前に送還が行われ、難民該当性を裁判上争う機会を奪われる危険を生じる。
 近年の実例として、2021年9月22日に東京高等裁判所において憲法第32条違反の違憲判断がなされた送還事例においては、2014年12月17日に難民不認定処分に対する異議申立の棄却が告知された後、本人が「弁護士に連絡を取りたい、訴訟を提起したいと何度も訴えたにもかかわらず、約30分の間に5度架電する機会を与えられただけで、結局、同弁護士と連絡が取れないまま(同判決から引用)」、翌18日、羽田空港から強制送還がなされている。
3 この点入管庁は本制度の代替措置として「退去強制令書発付後1か月間は送還を猶予する旨を本人に通知する」ものとしている。しかしながら、特に被退去強制者が自ら行政手続きを進めていた場合、入管収容施設に身柄拘束されている状況で、1か月以内に代理人弁護士を選定し、訴訟提起を行うことは現実的ではない。行政手続き中に既に弁護士委任をしていた場合であっても、1か月間で決定内容の十分な検討、証拠の準備を行い、訴訟提起に及ぶことは困難である。行政事件訴訟法が6か月の出訴期間を定めていることからしても、1か月という期間はあまりに短く、被退去強制者の裁判を受ける権利を実質的に阻害するものと言わざるを得ない。
4 以上のとおり、憲法上の権利擁護のためにも極めて重要な本制度につき、日弁連との間の合意に基づいて実施されていたにもかかわらず、入管庁が一方的に廃止することは到底許容できない。そこで、当会としては、上記のとおり、入管庁による本制度の廃止に抗議し、通知の再開を求めるものである。
 
 
2026(令和8)年3月27日
栃木県弁護士会     
会長 杉 田 明 子