栃木県弁護士会からのお知らせ

最低賃金の大幅な引き上げ等を求める会長声明

 中央最低賃金審議会は、昨年度、全国加重平均66円の引き上げを答申した結果、すべての都道府県で最低賃金が時給1000円を超えるとともに、全国加重平均額は時給1121円に達した。また、栃木県の引き上げ額は64円となり、その結果、最低賃金は時給1068円に改定された。いずれも、昭和53年に現在の制度が始まってから過去最高額となった。しかし、厚生労働省の勤労統計調査によれば、名目賃金は平均すると前年度比2.5パーセント増となったものの、急速な物価高の影響から、賃上げが物価の上昇に追いついていないため、実質賃金は平均して0.5パーセント減少したとの結果が出ている。したがって、昨年度の最低賃金の上昇によっても、最低賃金付近での労働を余儀なくされている労働者の生活は、依然として経済的に苦しい状態が続いている。したがって、名目額のみにとらわれることなく、実質的にも賃上げの効果が生じる水準に達するまで最低賃金を引き上げる必要がある。また、栃木県の最低賃金は、全国加重平均よりも53円低いが、物価の上昇により、全国的に食料品や公共料金等の生活の維持に必要なものの価格が広く上昇していること等を考慮すると、このような格差を設ける合理的な理由を見出すことは困難である。
 岸田元首相は、2030年代までに最低賃金を全国平均で時給1500円に引き上げるという目標を掲げ、石破前首相は、その達成時期を2020年代に前倒した。しかし、高市首相は、就任後、最低賃金の引上げを経済政策の重要な1つとして掲げたものの、中小企業が賃上げできる環境を整備する必要があることを理由に、まずそのための政策を実行することが必要であると述べるにとどまり、時給1500円を実現する時期については明言を避けた。報道によれば、高市首相は、2026年6月、その達成時期について、遅くとも2030年代前半のできる限り早い時期とする意向を示したと伝えられているが、これは石破前首相が前倒しした「2020年代」を事実上先送りするものである。確かに、雇用の受け皿となっている中小企業の環境を整備する必要性があること、及び、その実現に一定の時間を要することは認めざるをえない。しかし、現時点において、その政策の効果が十分に生じているかは必ずしも明らかでない。そこで、最低賃金の引き上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対する効果的な支援策の速やかな実行が必要である。
 また、昨年度は、最低賃金の改定額の発効日を遅らせる都道府県が目立ち、6県については、2026年に入ってから最低賃金の改定額が発効した。このような事態が生じたことから、中央最低賃金審議会は、2026年6月、都道府県に対し、最低賃金の改定額を適用する発効日を遅らせる場合には、その必要性について十分に議論した上で決定することを求めた。最低賃金は、その時点での労働者の生活を維持するために必要な金額として決定されるものであるから、改定額を決定した後は可能な限り速やかに発効すべきである。
 以上から、当会は、栃木県の最低賃金について、少なくとも全国加重平均額の水準まで引き上げるとともに、全国加重平均額についても、労働者が健康で文化的な生活を確保できるよう、物価上昇率を超える大幅な引き上げを求める。また、今年度の改定額を決定した後は速やかに発効することを求める。

2026年6月30日
栃木県弁護士会 会長 五味淵郁章