栃木県弁護士会からのお知らせ

上限金利規制・総量規制の見直しに反対する会長声明

 深刻な多重債務問題を解決するために,平成18年12月に,上限金利の引き下げ,総量規制(年収の3分の1以上の貸付の禁止)等を内容とする貸金業法の改正,出資法の改正がなされ,段階的に施行され,平成22年6月に完全施行になってから2年余りが経過した。

 これらの法改正により,5社以上の借入がある多重債務者は法改正時には230万人であったのが平成23年には44万人に激減し,自己破産申立件数も平成19年には17万件であったのが平成23年には10万件に減少し,多重債務を原因とする自殺者も平成19年には1973人であったのが平成23年には998人に半減するなど,多大な成果をあげてきた。

 当会においても,多重債務相談センターを立ち上げ,栃木県多重債務者対策協議会で県を初めとする関係諸機関との連携を強化し,多重債務者の救済活動を行ってきたところである。

 しかるに,一部の国会議員の中に,金利規制・総量規制の緩和を求め,貸金業法の「再改正」を求める動きが見られる。その根拠として,総量規制等のために貸付を受けられない者が増加していること,特に中小事業者が短期の資金繰りに困っていること,その結果,貸付を求める者がヤミ金融に流れて被害が増大していること等をあげている。

 しかし,ヤミ金融について平成19年と平成23年の統計を対比すると,警察の検挙件数は484件から366件に減少しており,全国の消費生活センターへの相談件数も4237件から916件にまで減ってきており,さらには,ヤミ金融の被害規模も小型化しており,ヤミ金融被害が広がっているという事実は存在しない。

 さらに,中小事業者に対して,国は,緊急保証,セーフティネット貸付及び中小事業者に対する金融円滑化対策を実施し,地域金融機関等による支援策を行っている。このように,貸金業者による個人零細業者への総量規制の例外貸付も一定の実績を有している現状のもとで,必要な対策は,短期かつ高利の資金提供ではなく,総合的な経営支援策である。

 当会は,改正貸金業法完全施行2年の成果を評価し,残された課題に対しても,今後とも積極的に取り組んでいくことを確認するとともに,多重債務問題対策を後戻りさせることとなる金利規制・総量規制を緩和する法改正に対して,強く反対の意見を表明する。

平成24年9月26日
栃木県弁護士会
会 長 蓬 田 勝 美