栃木県弁護士会からのお知らせ

宇都宮東警察署の大量の誤測定事件に関する会長声明

 栃木県警宇都官東警察署は、平成23年7月から平成24年5月にかけて、レーダー式速度測定装置を用いたスピード違反の摘発の際、その使用方法を誤り、約4200件に及ぶ誤測定を行った。その結果、400件以上の誤った罰金刑等が科され、約3600件に及ぶ不当な行政処分をもたらすことになった。
 刑事手続において、国家が国民に刑罰を科するにあたっては、法律の定める適正手続によるべきことは法治国家の基本であり、憲法上の要請に基づくものである。行政手続についても、同様である。にもかかわらず、警察官が作成した証拠能力のない速度測定報告書によって、4000名以上の者が誤った罰金刑等を科されたり、不当な行政処分を受けたことによる人権侵害性は甚だしく、前代未聞かつ極めて異常な事態というべきである。
 それと同時に今回の誤測定事件で憂慮すべきは、4000名以上の虚偽自白が捜査機関によって、作出されたことである。再審公判後の当会実施の担当弁護人に対するアンケートの結果においては、警察官が主張するほどスピードが出ていない旨を当初は述べていたにもかかわらず、警察官が全く聞き入れなかったことから、やむを得ず虚偽自白に至ったという案件が多数報告されている。この点からすれば、摘発にあたった警察官は謙虚に運転者の言い分に耳を傾ければ、より早い時期に誤測定に気づいたはずというべきであるが、約10か月にわたり誤測定が警察内部から修正されることはなかった。そして、延べ17名の警察官が摘発に携わったとの事実からすれば、多数の捜査官が誤測定の結果に基づき、多数の者に長期間、虚偽自白の強要を続けたと評価せざるを得ず、極めて深刻な事態と言わざるを得ない。栃木県においては、冤罪事件である足利事件や、宇都宮東警察署における知的障がい者に対する誤起訴事件が発生しており、虚偽自白に対する捜査機関の問題意識が高まってしかるべきであるが、両事件を経てもなお、組織的な自白強要の姿勢が改まっていないことは危機的というべきである。
 このような深刻な事態が発生したことを受け、栃木県弁護士会ほか3弁護士会は、栃木県警察本部及び宇都宮地方検察庁に誤測定の経緯についての詳細な報告、検証、調査、再発防止策の策定を求めた。しかしながら、再発防止については抽象的な回答をするにとどまり、今後の検証、調査についてはまったく触れられず、実のある回答は得られなかった。上記のような未曾有の事態に対しての回答としては、あまりに不十分というべきであり、真に再発防止や虚偽自白の強要の防止が徹底されるのか懸念されるところである。
 よって、当会としては、関係機関に対し、このような事態に至った経緯の詳細の調査、検証の実施、再発防止の具体的内容の報告について、改めて強く求める次第である。
2013年(平成25年)11月28日
栃木県弁護士会
会長  橋 本 賢 二 郎