栃木県弁護士会からのお知らせ

特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会報告書に対する意見書

2021年(令和3年)1月28日

栃木県弁護士会 
会長 澤田 雄二


 令和2年8月19日,特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会において報告書(以下,「報告書」という。)が提出された。報告書では,特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下,「預託法」という)及び特定商取引に関する法律(以下,「特定商取引法」という)の制度の在り方について一定の見解が示されたが,本意見書では,その内容の具体化を求めるとともに,重要論点につき,意見を述べる。

第1 意見の趣旨
1 販売預託商法については,罰則により原則禁止とし,民事上は無効とすべきであるとする報告書の提言に沿って,法改正を実現することを求める。その際,“稜簍詑商法について,脱法行為が生じることがないような定義とし,金融商品取引法の集団投資スキームの定義との間にすき間が生じることがないよう両法律の適用範囲の明確化を図ること,過去の販売預託商法の大規模被害の実態や反社会性の強さを踏まえ,詐欺罪に匹敵する十分な抑止力をもつ法定刑を設けることを求める。
2  詐欺的な定期購入商法の被害をなくすために,独立した実効性ある規制を設け,々告画面において,「お試し」「初回無料」など定期購入が附帯していないかのように誤認させる文言を表示することの禁止,広告画面及び申込確認画面において,初回分の価格・数量を2回目以降の定期購入の契約内容と分離して表示する行為の禁止,これらの禁止規定に違反したとき,十分な抑止効果がある罰則の対象とすることと,ず誤取消し(電子消費者契約法3条)の対象とすることを求める。また,解約・解除を不当に妨害する行為を禁止するため,ス告画面及び申込確認画面において,解約自由・解除保証等の表示を強調しながら,解約方法や解約条件に関する制限を目立ちにくい小さな打消し表示とする行為や解約申出の連絡を事実上困難とする行為を禁止すること,Δ海譴飽稟燭靴疹豺腓蓮ぃ臆麑椣聞澆侶戚鵑砲弔い特翕啣鯡鷂△鯤歉擇垢襪海箸魑瓩瓩襦
3 消費者から注文を受けないで一方的に商品を送り付け,代金を請求しまたは商品の返還を請求する行為(いわゆる送り付け商法)を禁止し,,海譴飽稟燭靴森坩戮蝋埓処分の対象とするとともに,¬瓜効果として,期間経過を要件とせず直ちに,事業者が商品の返還請求権を喪失すること並びに消費者の代金支払義務及び不当利得返還義務が存在しないことを明記することを求める。


第2 意見の理由
1 意見の趣旨1(「販売預託商法」の原則禁止)について

 販売預託商法とは,物品・権利を販売すると同時に,当該物品を預かり,自ら運用する,又は第三者に貸し出す等の事業を行う等して,配当等により消費者に利益を還元したり,契約期間の満了時に物品等を一定の価格で買い取ったりする取引をいう。
 我が国では,販売預託商法により,多数の消費者に深刻な被害をもたらす事案が繰り返し発生してきた。その被害総額は,豊田商事事件以降の主な事件だけで,合計1兆円を超える。具体的には,金地金の買戻しによる利益を謳った豊田商事事件(約2000億円),マルチ商法の勧誘手法により,拠出金が二倍になると謳った八葉物流事件(約500億円),格安料金でIP通信サービスを展開するという事業計画で出資を募り,配当による利益を謳った近未来通信事件(約400億円),和牛のオーナーになることで高配当を行うと謳った安愚楽牧場事件(約4200億円),磁気治療機器のレンタル料等による利益を謳ったジャパンライフ事件(約2000億円),ヨーグルト等の商品のオーナーとなることで買戻し時に利益がでることを謳ったケフィア事業振興会事件(約1000億円)等がある(検討会第1回参考資料9,1頁)。
 報告書においては,販売預託商法を「消費者に深刻かつ甚大な財産被害を及ぼすおそれが高い反社会性のある行為」として原則禁止すべきとしており,禁止の対象となる範囲の明確化を検討すべきとしている(報告書4ないし5頁)。
 この点,悪質な販売預託商法に共通する本質的問題は,物品等を販売すると同時に預かると説明しつつ,実際には物品等が存在しない(物品欠缺),当該物品等を運用する事業の実態がなく,早晩破綻することが明らかであるにもかかわらず(事業実態の欠缺),高い利率による利益還元が受けられる,あるいは販売価格と同額での買取りにより元本を保証すると説明して取引に誘引する点で(元本保証),消費者を二重に欺いている点にある。
 そこで,報告書の趣旨に沿い,販売預託商法を原則禁止とすると共に,その対象となる販売預託取引の定義を検討するに当たっては,悪質な事業者の脱法行為を防止すべく,上記のような販売預託商法の本質に着目した定義規定を設けるべきである。
 また,商品のオーナーとなるという買戻特約付売買契約の形態をとったケフィア事業振興会事件のように,一定の預託期間(3か月間,同法2条1項1号,同法施行規則2条)の要件を潜脱するような取引が存在する。こうした取引は,少なくとも金融商品取引法の集団投資スキームによって規制を及ぼすべきであり,同法の集団投資スキームの定義との間にすき間が生じることがないよう,両法律の適用範囲の明確化を図るべきである。


2 意見の趣旨2(詐欺的な定期購入商法)について
 近年,インターネット上の通信販売において,実際には一定回数以上の商品を購入する定期購入契約であるにもかかわらず,インターネット広告画面上において,「初回無料」,「お試し〇〇円」といった表示がなされ,これを見た消費者が,初回分のみの購入契約であると誤認して定期購入契約を締結してしまうというトラブルが急増している。このようなケースでは,消費者は,2回目の商品が送付されてはじめて定期購入契約であったことに気づき,2回目以降の代金の支払いを余儀なくされている。また,消費者に定期購入であることを明示しつつ「いつでも解約可能」と称して契約を締結させ,他方で解約方法や解約条件に関する制限を目立ちにくい表示としたり,解約申し出の連絡を事実上困難にさせたりする事例もある。2019年(令和元年)度(11月30日時点)にPIO−NETに寄せられた相談は29,177件であるところ,既に2018年(平成30年)度の23,002件を上回っており,前年度同期比約230%と激増している。
 消費者庁は,「詐欺的な定期購入商法」について,特定商取引法における顧客の意に反して通信販売に係る契約の申込みをさせようとする行為等に関する規制を強化すべきであり,具体的には,独立した禁止行為とした上で,規制の実効性を向上させるべきとしている(報告書7頁)。
 この点,詐欺的な定期購入商法の本質的問題は,「お試し」,「初回無料」などとして無料又は大幅な割引価格を表示し,消費者に「一度試してみて,2回目以降に商品を買うかどうかは自由である」との認識を与えながら,この認識とは両立し得ない,定期購入の条件を附帯させていることである。
 したがって,まずは々告画面において,お試し・初回無料など定期購入を条件としていることを誤認させる文言の表示自体を禁止すべきである。また,禁止行為違反に対しては十分に抑止効果がある罰則の対象とすること,並びに錯誤取消し(電子消費者契約法3条)の対象とすべきである。
 また,詐欺的な定期購入商法の契約に関して,解約・解除を不当に妨害する行為の禁止として,9告画面及び申込確認画面において,解約自由・解除保証等の表示を強調しながら,解約方法や解約条件に関する制限を目立ちにくい小さな打消し表示とする行為並びに解約申出の連絡を事実上困難とする行為を禁止し,い海譴飽稟燭垢訃豺腓蓮ぃ臆麑椣聞澆侶戚鵑亡悗靴特翕啣鯡鷂△鯤歉擇薫稾鷆發猟蠅瓩鮴限すべきである。


3 意見の趣旨3(送り付け商法)について
 2013年には高齢者を狙った悪質な健康食品の送り付け商法が急増し7000件を超え,大きな社会問題となった。近時では,自宅に突然マスクが届く等,新型コロナウイルス下でのマスク不足の状況につけ込んだ送り付け商法が横行し,消費者庁が注意喚起を行った。国民生活センターの発行する消費生活年報によれば,2009年以降,全国の消費生活センター等に寄せられた送り付け商法に関する相談は,高齢者の相談の割合が高く,概ね3000件前後に上る年度が多いとされている。
 特定商取引法第59条第1項は,販売業者に商品の引取りを請求した場合はその日から7日,引取りを請求しない場合は受け取った日から14日を経過するまでに,送付を受けた者が売買契約の申込みを承諾せず,販売業者も引取りをしないときは商品の返還を請求することができないと規定している。
 しかし,販売業者が消費者に商品を承諾なく送り付け,代金を請求したり諾否の連絡を要求したりすることは,いずれも直接禁止されておらず,行政処分の対象にもなっていない。そのため,現状では不当な勧誘が繰り返され,また,消費者は14日経過するまでは商品の保管を余儀なくされている。
 こうした弊害を取り除くためには,端的に,消費者の承諾なく商品を送付して対価を要求すること及びその商品に係る売買契約の諾否の回答又はその商品の返還を求めて消費者に連絡をとることを,特定商取引法において禁止とし,実効性の確保のため,行政処分や刑罰の対象とするべきである。
 参考になるものとして,EU,イギリス,アメリカ(連邦及び一部の州),カナダ(一部の州),ブラジル,アルゼンチン,韓国,オーストラリア,ニュージーランドなどの多くの国で,送り付け商法(ネガティブ・オプション)は禁止又は違法とされ,行政処分,差止請求,刑事罰等が設けられている。
 また,受領者が保管の負担を負う合理的な理由はないこと,事業者による不当な請求を防止する必要があることから,送り付け商法の規定を改正するに当たっては,期間経過を要件とせず,直ちに事業者が商品の返還請求権を喪失すること並びに消費者の代金支払義務及び不当利得返還義務が存在しないことを特定商取引法上明記すべきである。
 参考になるものとして,イギリスやアメリカの立法例では,一方的な商品の送り付け行為は贈与の申し込みとみなすことができる旨の規定も存在する。

以上