栃木県弁護士会からのお知らせ

宇都宮地方裁判所における裁判員裁判第1号事件に関する会長談話

 本日、栃木県民から多大な関心を持たれていた宇都宮地方裁判所での第1号となる裁判員裁判の判決が言い渡されました。
 この事件は外国人による殺人事件であり、通訳を介しての審理となりましたが、4日間の審理は概ね事前の審理計画のとおりに進行したものと思います。審理は、裁判員にも分かりやすいように、当会会員の弁護人ら、訴訟に関与する関係者の努力が払われたと思います。また、審理をされた裁判員の方々には、真摯な姿勢で審理に臨まれたことに敬意を表します。
 ところで、判決は、検察官の懲役20年の求刑に対して、懲役18年という判決でした。これまでの同種事件の判決と比較して、かなり厳しい量刑であるとの感が否めません。この結果は、一般市民の感覚の反映と考えることも可能ですが、近時の刑事裁判における厳罰化の傾向が裁判員裁判によって一層進むということも窺わせるものです。弁護士会としては、有罪宣告を受けた者の社会復帰の困難性や、刑罰の公平性という観点からの危惧を覚えざるを得ません。量刑を言い渡す裁判員の心理的負担が重いという面からみても、このままの制度で良いのかについて国民的議論をなす必要があるように思います。
 栃木県弁護士会は、今回の事件やこれから行われていくであるだろう裁判員裁判に関して、必要かつ充分な審理が行われたかどうか、審理運営上の問題点は何か、などについて検証を行い、法律で定められた3年後の制度見直しに向け、有意義な提言を行っていきたいと考えています。そのうえで、より良い刑事裁判制度の実現に向けて一層の努力をしていく所存です。
 
  2009年(平成21年)12月4日
栃木県弁護士会
 会長 田島二三夫