栃木県弁護士会からのお知らせ

最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明

 中央最低賃金審議会は、昨年は、全国加重平均28円の引上げを答申し、その結果、栃木県の引き上げ額は28円であり、最低賃金時間額は882円に改定された。
 栃木県における最低賃金時間額882円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約15万2600円、年収約183万円にしかならず、ここから税金、年金や健康保険料等を支払うのであるから、この金額では労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難である。
 我が国の相対的貧困率は依然として15.4パーセント(2018年)と高止まりであり、貧困と格差の拡大は性別や世代を問わず深刻化している。働いているにもかかわらず貧困状態にある者の多数は、最低賃金付近での労働を余儀なくされており、最低賃金の低さが貧困状態からの脱出を阻む大きな要因となっている。
 2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」では、2020年までに最低賃金時間額を全国加重平均1000円にするという目標を定めており、2021年5月14日には菅総理大臣(当時)も最低賃金の引き上げは不可欠だとして、より早期に全国平均で時給1000円とすることを目指して取り組む考えを強調している。この目標に少しでも近づけるには、最低賃金の大幅な引き上げが必要である。そして本年は、日本商工会議所と全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会は、最低賃金審議にあたり「労使双方の代表が意見を述べる機会を設定し、経済情勢や賃上げの状況などを十分に反映したものとすべき」との意見を出しており、昨年までの現行水準維持から意見を改めているのであるから、今年こそ思い切った引き上げをすべきである。
 また、最低賃金の引き上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対しては、支援事業をさらに充実させるなどの配慮をされたい。
 労働者の生活を守り、新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも、最低賃金額の大幅な引き上げを図り、労働者の健康で文化的な生活を確保すべきである。

2022(令和4)年6月23日
栃木県弁護士会会長 安田真道